2023/03/27 14:48

国土の総面積41.285㎢、日本の九州に近い面積のスイスは、ヨーロッパの中央に位置しながらEUには加入せず、環境保護に重点を置いて独自の農業政策を展開しています。隣国のフランスやイタリアのワインに比べると日本に輸入されるスイスワインは極少量ですが、以前に比べるとスイスワインを販売するお店やスイスワインに関する情報も増えてきました。ここでは簡単に、スイスワインについてご紹介します。


【歴史】

紀元前58年、ジュリアス・シーザーがローマ軍を率いてスイスに侵攻した折、ブドウ栽培とワイン造りがスイス各地に広められたのが始まりだと言われています。その後812年にカール大帝が推進した農業振興政策によりワイン造りの技術が進歩し、カトリック教会最古の修道会となるベネディクト会や、ベネディクト修道会の一派・シトー会の聖職者の手により発展し、今日の礎が築かれました。


【地理的条件】

国土の70%をアルプス山脈とジュラ山脈が占め、その山々に守られるようにブドウ畑が広がっています。ヨーロッパの主要河川の源流であるローヌ川やライン川がブドウ畑を縫うように流れ、大小約1,500ある湖がさらなる太陽の恵みとなり、地形の高低差の影響も受けて良質なブドウが育まれています。


【主なブドウ品種】

スイスを代表するブドウ品種は白ブドウのシャスラです。古代からスイスの人々に愛されてきた伝統品種であり、各地で栽培され、白ブドウ栽培面積の約55%を占めています。産地や造り手により、軽快なものから重厚感のある味わいまで、バラエティに富んでいます。

黒ブドウの栽培面積第1位はピノノワールです。赤ワインのほか、フランス語圏を中心にロゼワインの生産も盛んです。

このほか、スイスではブドウの品種改良が積極的に行われており、ヴォー州ニヨン近郊の研究所では黒ブドウのガマレやガラノワールが生まれ、生産量を伸ばしています。

全体の生産量は赤ワイン52%、白ワイン43%、ロゼワイン5%です(2016年度)。


【産地】

スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語。それに呼応するかのようにワインの産地もそれぞれの言語圏において多様性があります(注:ロマンシュ語を日常語としている人数はスイスの全人口の1%にも満たず、ドイツ語・イタリア語とともにロマンシュ語を公用語と認めているグラウビュンデン州はワイン産地としてはドイツ語圏に該当します)。


【代表的な産地と特徴】


●Valais(ヴァレー)

ワイン産出量の約40%を誇るスイス最大のワイン産地。ローヌ川の渓谷に沿って約120㎞にわたってブドウ畑が広がる。標高は650~800m。ピノ・ノワールとガメイの使用が85%以上と定められている赤のDôleはヴァレー州の名産品。

●Vaud(ヴォー)
シャスラが生産量の約60%を占めるスイス第2のワイン産地。ジュラ山脈に守られ、レマン湖を中心にブドウ畑が広がる。標高は375~700m。ラヴォー地区は2007年6月にブドウ畑の美しい景観とワイン造りの長い歴史が評価され、世界遺産に認定されている。

●Neuchâtel(ヌシャテル)
ワイン造りの歴史は1000年前に遡る由緒ある産地。ヌシャテル湖北岸からビール湖の入り口までブドウ畑が続く。標高は430~600m。ピノ・ノワールから造られる美しい色調のロゼワイン「ウイユ・ド・ペルドゥリ」発祥の地でもある。

●スイス・アルモン(西地区)
栽培面積は約2600ha、標高は320~600m(ドイツ語圏全体)。Basel-Landschaft(バーゼル・ランドシャフト)の土壌は石灰岩、砂利質。グートエーデル(ドイツ語圏でのシャスラの名称)が多く造られている。他に西地区の産地は9つある。 

●Ticino(ティチーノ)
スイス南部、イタリア国境に隣接したワイン産地。アルプスの峠とマジョーレ湖やルガーノ湖の高低差のある地形。地中海性気候。1907年にアメリカの台木にフランスのメルロを接木したことにより栽培品種の85%がメルロで、赤・白・ロゼが造られている。

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